新国立競技場について考える

先日、お付合いさせていただいている東工大の大澤昭彦先生の新著『高さ制限とまちづくり』の刊行記念講演会を聴いて来ました。
高さ制限とは、まちづくりの中において「良好な住環境の確保」や「都市景観の形成」といったものに欠かせないもので、今や多くの自治体で導入されているものです。
狛江市でも25mの高さ制限はほぼ市全体にかかっていますが、あまり知られていないかもしれません。
多摩川に行くと、川崎側に屏風のようなマンションが建ち、景観的には決して良好とは言えないものになっていますが、愛知県犬山市と岐阜県各務原市では木曽川を挟み、両自治体の間で景観に関する取決めを行い、景観を損なう高層建築物が建たないよう高さの制限を設けています。
同じように多摩川周辺の景観を地域資源の重要な柱として位置づける狛江市も、将来的には川崎市との間で同じような取決めが出来ると良いなと思います。
さて、今、2020年の東京五輪に向けた(実際にはその前年のラグビーW杯に向けた)国立競技場の全面建替えが既成事実となっている感があります。しかし、本当にそれで良いのでしょうか。
あまりに根源的なところ(そもそものところ)が議論されていないことに危機感を覚えます。具体的には、
・現在の国立競技場の建設時からの議論(神宮外苑の景観を巡るもの)
・17日間利用されるだけのスタジアムとしての約17億ドル(約1700億円)の初期費用
(ロンドン五輪の2倍、北京五輪の3倍)と維持管理費用年間3500万ドルから4300万 ドル(35~43億円)が妥当か
・8万人収容の条件はIOC(国際オリンピック委員会)の条件ではなく、五輪後そのよう
な規模の利用がどれだけ行われるか
・15mの高さ規制が現在のザハ・ハディド女史の案のために解除されたこと
・新国立競技場の建設が大規模であるほど、東北地方の再建に与える影響は大きくなる こと
等々が挙げられます。
現在、建築家の鈴木エドワード氏らがインターネット上の署名サイトchange.orgで
「緊急請願、旧国立競技場の解体を中止し、2020年オリンピックに再使用しよう」という署名を集めています。(http://chn.ge/SdyVtH)
以下はシンポジウムのお知らせです。
緊急シンポジウム 「神宮の森から新国立競技場を考える」
5月28日、JSCは新国立競技場の基本設計を発表しました。昨年11月26日の案を踏襲し、ザハ・ハディド氏デザインの流線型を改変しただけの巨大競技場です。また新素材を使うため屋根ではなく遮音膜と巧妙に言い換え、サブトラックや都営住宅にはなんら言及のないままです。
そして次々、さよならイベントをやって建て替えを既成事実化しています。
神宮の森を護るための、これが最後の機会にならないよう、ふるってご参加下さい。
(主旨文より抜粋)
◇日時:2014年6月15日(日)午後1時30分-4時30分(開場午後1時00分)
◇会場:日本建築家協会・建築家会館本館1階ホール(渋谷区神宮前2-3-16)
http://www.kenchikuka-kaikan.jp/?page_id=15
◇登壇者:三上岳彦、原科幸彦、司会:森まゆみ、権上かおる
◇参加費1,000円
◇申込:要予約、定員100名 申込先→http://form1.fc2.com/form/?id=918577 問合先→info@2020-tokyo.sakura.ne.jp
◇主催:神宮外苑と国立競技場を未来に手わたす会 http://2020-tokyo.sakura.ne.jp/