特定秘密保護法案について

 現在、参議院で審議されている特定秘密保護法案。国民各層からの慎重審議を求める声、法案そのものに反対の声が日に日に高まっています。

 私もこの問題に関しては物を言わないことは将来に大きな禍根を残すと思っています。一国民として、子や孫の世代にきちんと説明が出来るように考えを整理しなければと考えます。与党は先に成立した日本版NSC設置法、この特定秘密保護法案を来年以降国会にかけようとしている「国家安全保障基本法案」につなげようとしていると言われています。国家安全保障基本法はその枕詞に「集団的自衛権の行使を可能にする」と紹介される法案です。

 この法案に関する現時点での私の考えは、少し長くなりますが以下のとおりです。

 他の民主主義諸国でも類似の国家秘密保護の仕組みが存在することから他国との情報交換を円滑に行うためには一定の国内法令を整備しなければならない。しかしながら、本法案が国家秘密の適正な管理を実現するものなのか、政府の恣意的な判断に委ねられてしまう恐れがあるものなのかについて、今臨時国会で十分な議論が尽くされたとは言い難い。

 まず、最初の疑問点として浮かぶのは、果たして我が国は国家秘密を保護出来ない法律体系になのかという点である。国家公務員法は、「職務上知ることのできた秘密」を守る義務を課し、その漏洩を一年以下の懲役刑等で処罰することを定めている(100条1項、109条12号)。同様の規定は、自衛隊法にも見られる(59条1項、118条1項1号)。また、日米安全保障体制においては、刑事特別法(1952年)が、また日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法(MDA法。1954年)がそれぞれ機密・秘密を侵した者に対して、10年以下の懲役という重い法定刑を定めている。これらの法制では不十分であるという点について、納得の行く説明が政府側からなされただろうか。

 秘密軍事情報を受領する締約国政府は、自国の国内法令に従って、秘密軍事情報について当該情報を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。(秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定 第六条 秘密軍事情報を保護するための原則(b))

 特定秘密保護法制定の契機となったと言われる上記「日米軍事情報包括保護協定」(General Security of Military Information Agreement. 通称GSOMIA・ジソーミア)に政府は2007年8月10日に署名しているが、協定相手国の米国の法制との均衡(バランス)はどうか。米国では、防諜法(合衆国法典793条ないし797条)が秘密保全法の基幹部分をなしていると言われているが、同法の内容をなす国家秘密の指定と解除は、オバマ大

統領の下、大統領令13526号によって定められた(2009年12月)。指定対象となる情報が以下の8項目に類型化されており、かつ指定されるためにはそれを開示した場合、国家安全保障上のダメージが予期され、かつその損害を特定出来ることが要件とされている。

① 軍事計画、武器システム、又は作戦、②外国政府情報、③インテリジェンス活動(秘密活動を含む)、④機密情報を含む連邦政府の外交関係又は外交活動、⑤国家安全保障に関連する科学的、技術的、経済的事項、⑥核物質又は核施設に対する安全防護策に関する連邦政府プログラム、⑦国家安全保障に関連するシステム、施設、社会基盤、プロジェクト、計画、防護サービスの脆弱性又は能力、⑧大量破壊兵器の開発・生産・利用

 また、米国の大統領令13526号では次の秘密指定は禁止される。

① 法令違反、非効率性の助長又は行政上の過誤の秘匿、②特定の個人、組織、又は行政機関に問題が生じる事態の予防、③競争の制限、又は、④国家安全保障上の利益の保護に必要ない情報の公開を妨げ、又は遅延させる目的で行なう指定。

 今回の法案でも、政府が特定秘密の指定等に関し統一運用基準を定めること、その策定・変更の際に外部有識者からの意見聴取の手続が義務づけられたことがあるが、この辺りについてもどのような方法で行うかは明確でない部分が依然残っている。

 秘密の指定解除に係る年限についても、米国では10年以下、10年以上、25年とし、それ以上は機密性の特別に高い事項に限り50年又は75年という刻みを設けている。沖縄密約が沖縄返還から25年経って米国で公開され明らかになったことは記憶に新しいところである。翻って本特定秘密保護法案の指定解除に係る年限の刻みは妥当なものと言えるであろうか。

 この他にも、米国では秘密情報を適正な権限に基づき保有している者による不適切な指定等についての行政機関への異議申立の推奨、当該行政機関の判断に不服の場合の審査請求制度や、情報保全観察局長の解除請求、一般市民からの解除請求・当該行政機関の決定に不服の場合の省庁間秘密指定審査委員会への審査請求、国家秘密解除センターによる解除促進など指定の適正化を図る仕組みがさまざま用意されている。

 現在、参議院の議論を通じ、政府からは多少の修正の意向が示されてはいるようであるが、こういった内容が果たして特定秘密保護法案について十分議論されたであろうか。

 米国においては、トルーマン大統領の下、1951年に大統領令10290号で機密指定権を、軍事に関係しない省庁にまで拡大したところ、議会、マスコミから反発を受け、政権交代後、アイゼンハウアー大統領が1953年11月に大統領令10501号を発し、機密指定を行える行政機関の数を大幅に縮小したという歴史もある。

 本年9月に法律案の概要が公表され、それに対するパブリックコメントはわずか2週間という短さであり、かつ約9万件の意見のうちの8割近くが反対の立場であったことも踏まえると本特定秘密法案に関する議論はまだ不十分であると言わざるを得ないのではないか。

上記の理由及び各種世論調査等により法案内容や審議方法について多くの不安が示されていることに鑑み、現在参議院で審議中の特定秘密保護法について、次の点が担保されない現行法案については廃案とすべきである。

 特定秘密指定の恣意性

 特定秘密指定の対象範囲及び指定禁止の対象範囲の絞り込み

 特定秘密指定解除の年限の短縮化

 特定秘密指定解除方法の明示

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